「ありふれた奇跡」第6回

山田太一さんの脚本の見事さに、舌を巻きました。
”恋愛”というものの微妙な難しさをきちんと描きだした上で、
”親と子”という大きなテーマをしっかりと浮かび上がらせています。

仲間由紀恵さんの「告白」は、それほど意外なものではありません。
これまでもテレビドラマで何度か扱われてきた話で、
そういう意味では「ありふれた」悲劇と言っていいでしょう。
これに対する加瀬亮さんのリアクションと行動は、
”馬鹿さ加減に窒息しそう”という本人の台詞通りで、
痛々しいことこの上ない。
それがドラマを大きく動かしていくのですが、
この”窒息しそうなほどの馬鹿さ加減”にリアリティがないかというと、
僕には、これこそが”恋する男の馬鹿さ加減”そのもののように思えます。
こういう馬鹿なことをやってしまうんですよね、恋している時には。
この痛々しさこそが恋愛だ、と言ってもいいと思います。
また、これも「リアリティがない」とボロかすに言う向きがある
仲間さんと加瀬さんの会話やメールのやりとりについても、
僕は、心情的なリアリティはすさまじくある、と思います。
「今どきの若者はあんなメールをうたない」って言いますけどね、
彼らはそもそも、普通の「今どきの若者」という設定じゃないですし、
「今どきの若者」がリアルに書いたと称する「ケータイ小説」ドラマと
どちらが人間の真実に迫っているか、
比べるだけ馬鹿馬鹿しいことは言うまでもないと思います。

今回の白眉は、松重豊さんが子どもの絵を加瀬さんに見せるところですね。
ここは、ゆっくりと移動する1カットの中での芝居が中心ですが、
めちゃくちゃ笑えるし、
加瀬さんの性格的弱みを松重さんが適確に突くシーンでもあります。
もちろん、「親と子」というテーマをあぶり出す重要なシーンの1つです。
井川比佐志さん、風間杜夫さん、加瀬さんの親子3代が
居もしない孫の話で盛り上がるところも素晴らしいのですが、
岸部一徳さんが加瀬さんの家に乗り込んできて、
井川さんと風間さんに対峙するシーンがまた秀逸です。
このあたりは山田太一ドラマの真骨頂ですね。
息子を亡くしたスナックのママを塩見三省さんの警官が慰める一方、
その言葉が仲間さんを鋭く突き刺すというシーンも、実に上手い。
それぞれのシーンが充実している上に、
物語全体の流れがはっきりと見えてきたように思います。

監督は前回の谷村政樹さんから1回目の田島大輔さんに戻りましたが、
「山田太一ドラマ」のクオリティは保たれています。
次回も楽しみです。

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